140523 大宮前体育館


蟻鱒鳶ルを後にして、最近オープンした青木淳さん設計の大宮前体育館へ。西荻窪駅から20分ほど住宅街の駅前通りをずんずん歩くと、どんつきに大木が見えてくる。その脇に大宮前体育館は建っている。

五十嵐太郎さんが新聞に寄稿されていたレビューの通り、周りの住宅やビルに並ぶくらい軒高が低くて、ひっそり建っている印象。ガラス面も壁面も同じように扉高さで同じ見付のフレームで分節されていて、スケールが小さい。シールを使わず徹底的にドライジョイントで納められているように見える。


とりあえず外から一周してなんとなく真円かと思っていたが、地図を見たらぼんやりとした丸と四角のあいだのような形だった。それをわかって歩いても、やっぱり建物の形を感じ取れないのが不思議。図としての形を決めた、というより、敷地と隣棟に沿って「曲面の側を歩く」と感じられるように決められたような形。

そのせいか、学校帰りの小学生が列を乱して敷地の脇に入り込んだり、犬の散歩する人が建物床と外構の段差に腰掛けてたり、なんとなくずるっと入れる、入ってしまう。緑地の取られ方や、バス停からのアプローチと東屋の配置とか、外構含めた配置がとても馴染んでいる。

中に入る(ちなみに内部は写真撮影不可です)。

構造とか下地とか仕上げとか、慣習的なヒエラルキーを一旦まっさらに、どれもありなものとした上で、そのどれとも均等に距離を取って、どれかを表現するのではなく、見え方を構成する要素として余す所なく使われている、という印象を受けた。

何かを醜いから隠すのでなく、整頓して見え方が豊かになる要素として見せる。おそらくコストは結構厳しかったのではないかと想像するけれど、曲げガラスができなかったから平面ガラス、仕上げを貼れなかったから躯体現しではない印象。

ハンチをとられたラーメンRC打ち放し躯体も、柱は大きく面取りされたり、梁を面落ちにされていたり細かく調整されていて、体育館(窓越しに見ただけだが)や三層吹抜にそびえ立つ様は神殿のように見える。その梁に取り付く天井も、梁に沿ってエキスパンドメタルでカバーされている。

大屋根の天井に体育館やプールの四角に対して45度に振られたストライプ状の天井板とその隙間から見える直行するLGS野縁のグリッドは、丸っこい建物の形に対してどこからも同じように見えてしまうので、単純に四角の周りの回廊状廊下を廻っているだけのはずなのに、どっち面にいるかわからなくなる。


体育館の三層分の躯体であるRC壁は微妙に波打っていて、ビシっと決めるところをなんだか上手くはぐらかされたような感じがする。そのはぐらかされた感じ、というのが見学して感じる大らかさの由縁なのか。

せっかく水着も持ってきたのでプールで一泳ぎする。25mが4コースだけの小さいプール。事務室フロアの下になる子供用プールやジャクジーなどがある場所は天井が低く、子供だったり座ってゆっくりするには落ち着き、25mプールがある場所は天井が高く気持ちいい。背泳で泳いでいると高天井も45度に振られた模様のプレキャスト板?で仕上げられていて目に楽しい。25mのエンドとさっきの天井の段差が同じ位置に取られているので背泳しててもエンドがわかっていい。照明も飛び込み台のような柱に取り付いた踊り場に置かれ天井を明るく照らしている。

プールに入る前も、出た後も、ひっきりなしに多くの人が出入りしていた。体育館もプールもカフェも(カフェはちょっと残念な感じ。どうしてこういう施設のカフェはなんだか余った場所にとりあえずテーブルと椅子だけ置いた、となってしまうのか。後から急に必要になったのか?)平日なのに多くの近所の人に使われているのが、建物がいきいきしている感じを受けた。

自分の住む町、住んでいた町にも同じような規模の、おそらく同じような予算の街の施設があったけれど、(設計者によって)ここまでできるものなのか、というのが一番感じた素朴な感想でした。



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