71日目 100318 DELFT – ROTTERDAM – DELFT


0740起床。朝食と支度をして、0850出発。今日はロッテルダムでファンネレ工場を見れるように、Wさんがセッティングしてくださったため、1000の待ち合わせに電車に乗って向かう。

少し早めに着いてしまったので、先日教えてもらった(夜で見えなかった)近くのMVRDVの手がけた屋上のペントハウスを散歩がてら見に行く。

このあたりはロッテルダムでドイツ軍に爆撃されなかった数少ない地域のひとつらしい。住宅が建ち並んでいる。どこも一階にも部屋が入り、カーテンを閉めきっていないため、道との距離がすごく近い。ナチュラルに森山邸を実践している感じ。窓から見える室内は豊かな風景、奥に中庭が見える。

待ち合わせ時間に戻り、お宅に入れて頂くとすぐに、今日案内してくれるWさんの友人のアーティストが到着。以前建築ガイドの仕事をしていた。今日は彼の英語ガイド付きで見に行く。とてもありがたい。

自分のために友人に借りてくれた自転車に乗り、みなでファンネレ工場へぼちぼち向かう。

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Van Nelle factory
J.A. Brinkman
1920

■デルフト行きの電車の車窓からも見えますが、ロッテルダム中央駅から自転車で15分くらい。住所がわからないのですが、線路沿いを北西にgooglemapで見てもらえれば位置はわかると思います。

■外観と一階だけなら一見でも入れそうです。それ以上はガイドをしてくれた彼が入り口で何やら交渉してくれたカードキーがないと中に入れないようセキュリティーがかかっていました。
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入り口でガイドの彼が交渉してくれて無事入ることができた。自転車置き場に留めて、外観から説明してくれる。


建物は三つに分かれていて、入り口近くの平面形が湾曲したマネージメントのビル、その隣の最も大きなメインのファクトリービル、その向かいにある機械室と輸送/荷入れのためのビルとなっている。元々はロッテルダム市内にいくつもあった小さな工場をここに集中させることになり、ブリックマンが設計をすることになった。

メインのファクトリービルは扱う商品別に3つに分かれており、入口側がタバコ、真ん中がコーヒー、奥がティー、となっている。各フロア、一行程一フロアとなっており、上から下に工程が進むようになっている。外観で最も目をひく斜めに伸びる渡り廊下のようなチューブは、輸送で届いた材料をまず最上階へ送り(このチューブは人は入れない、荷物移動用のみとなっている)、最後に完成した製品を最下階の二階からまた元のビルへ戻し、そこから卸先へ輸送する、という工程のサーキュレーションに対応している。
外壁面に残っている片持ちの出っ張りは、計画時には作る予定だった他のチューブのための基礎らしい。それが1927の大恐慌によって中止になり、基礎だけ残ってしまった。

ブリックマンはこの建物で旧来の材料であるレンガや木を使わず、鉄とガラスとコンクリートのみでモダンな新しい建物を作ろうとした。また設備面でも当時は高級設備だった給湯やセントラルヒーティングを最初から装備し、自家発電機も建物内に取り付けられていた。敷地内にはテニスコートなどのスポーツ用フィールドもあり、明るく快適な作業環境と、健康な労働環境を先進的に標榜していた。現在はレンタルオフィスとして小分けにして貸し出されており、建築設計事務所もいくつか入っている。

浅はかながら見る前はバウハウス的な外観から単調な建物を想像していたのだが、その予想が大きく裏切られる。断面形状が三角のシスチールサッシと開口部はとてもシャープ。内部間仕切りなどにアルミ部材でのガラス枠があるのだが、そのぼったりとした感じは、かなり違いがある。開口部は風に煽られないように、数段階に止められるようになっている。窓際には太いパイプのセントラルヒーティングが走っている。ただ設備は冬を旨として作られているため、夏の日差しの暑さは厳しいようで、現在はブラインドが南側にはつけられており、また窓際は通路、その内側にまたガラス間仕切りと、ダブルスキンにすることで環境を確保している。鉄骨の螺旋階段もt7のチェッカープレートとアングルのみの段板によりとてもシャープ。

ファクトリー棟に入る。階段がなぜか二つある。当時は男性と女性が別々に働かなければならなかったらしく、施主や建築家は嫌がったが世間のプレッシャーが厳しく、このようになったそうだ。上階に大きな空間があり、今は食堂に使われている。テーブルの椅子が全て異なるのが面白い。

天井を見るとRCのスラブに穴が700mm間隔くらいで開いている。当時の機械を釣ったり、またゴンドラで商品や材料を輸送するためのレール支持に使われていたそうだ。今はプレートで塞がれている。マッシュルーム型のRC柱は上部が広がっていることとスラブがRCであることにより無梁空間を可能にしている。配管は全て露出しメンテナンスを容易にしている。柱においてもコの字型の金物を埋込、配線、配管ができるようになっている。

オリジナルの形が残っているトイレを見せてもらう。外壁にガラスがハメられ職場であったところからよく見える。当時は便器の扉もなく、管理者が労働者がさぼっていないか監視できるようになっていたらしい。今はその代わりにカメラがあるからね、とWさんが上手いことを言う。タイルはオリジナルで角は役物で丸められている。感心していると、当時は工業製品よりも手作業品が安かったから出来た、とのこと。今は完全に逆転している。

一通り案内してもらってから、近くの彼が今度借りる予定の新しいスタジオを見に行くことになる。元々はセックスショップだったらしく、赤い絨毯が床から壁から貼ってあったところを、全て取り除いたところで大家による改装工事が止まっているらしい。オランダでは何でも時間がかかるとぼやいていた。設備関係などが終われば、内装などは自分たちでやるつもりだそうだ。出来上がりをぜひ見てみたい。

すばらしいガイドに感謝し、お礼を言い、別れてお昼へ。天気がいいのでテイクアウトを買って、ミュージアムパークの芝生で食べる。ターキッシュ系のお店で買った料理(せっかく勧めてもらったのに名前を忘れてしまった、すいません。。。)が、とても美味しい。上着も部屋に置いてこれたくらいの陽気の中での外でのランチ。すばらしい。

食べてからせっかく自転車があるので、ロッテルダムを案内してくださる。陽気の中、ロッテルダムの街を自転車でぶらぶらできるだけで楽しい。嬉しい。エラスムス橋に始まり、川岸のフェリーターミナルや、地下鉄駅、最後に自転車を返しがてら、Wさんが通われる学校も見せてもらう。ここもデルフト大の建築学部棟同様、中庭にガラス屋根を設けて内部としている。古い建物を壊すことができず、かつ床面積が必要になるため、この形になることが多いらしい。明るくて作業環境としてはとてもよさそう。

そこでお二人と別れ、ボイマンス美術館へ歩いて向かう。お薦めのカフェで少し休んだ後、残り一時間ほど、駆け足で展示を巡る。ブリューゲルのバベルの塔の、その解像度がものすごい。これを見れただけでもよかった。あと、マルセルワンダースのknotted chairを初めて見る。予想以上に固くて丈夫そう。

17時過ぎに出た後、もう閉館したクンストハルを外から眺めに行く。

気が済んだ後、歩いて駅へ戻りデルフトへ帰る。1830着。戻って作業。キャベツとひき肉と玉ねぎのパスタを作って食べる。2430就寝。



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