27日目 100202 VENEZIA



0640起床。0700朝食に降りる。
どこもそうだが、結構朝食が付いているのに遅くまで寝て取らない人が多く、閑散としている。食べてから、これから3日間のための調べものをネットに繋げて行う。ここのwifiは2.5eで最初にアクセスしてから12時間だけ有効(累計でなく)なので、昨日は疲れて眠かったせいもあり、朝と夜に繋げることにした。地図や明日のブリオンヴェガのバスなど調べる。宿で買った通り名の入った詳細な地図に、見る建物をプロットする。

1000出発。今日は、というかヴェネチア滞在はほぼスカルパ建築巡り。

まずは宿の対岸のサンマルコ広場にあるオリヴェッティのショールームへ。



が、周りは開店準備をしているのに、閉まっている。退転したような閉まり方。隣の店舗の人に聞いてみたが、イタリア語でよくわからない。ので、東にあるQuilieni museoに向かう。こちらは開いていた。入場料10e。荷物は入り口にあるロッカーに預ける。写真撮影はダメと言われる。

前回イタリア行きの際には来てなかったはずなのだけれど、なぜ外したのか意味がわからないくらい、すばらしい。というかすごい、の一言。斉藤裕さんの本などでも詳細に載っていたはずだが、やはり実物を見ると凄さがよくわかる。

解説パンフレットによると、Mario Bottaが新しいエントランスやホールを増築改装している。しかしスカルパの手がけた部分は、Scalpa areaとして、そのまま保存されている。展示物は何もないが、その部屋自体が展示物のようなもの。工芸的なディテールで溢れている。

スカルパといえば、巧みな配置による動線(視線)のコントロールと、超技巧的なディテールが特徴だと思うが、ここも然り。
エントランスが変更されているため、スカルパ設計の橋(これも手すりや段板のディテールがすばらしい)からのアプローチでないため、本来の動線処理は体験できないが、それでも前面の運河から入ってきた、と見立てて歩いてみることはできる。

段板の角を取ることにより方向転換を促している。全てが徹底的に面に分割されている。ボリュームではなく面。柱もわざわざ石の貼り方や目地で面の連なりに分割している。

既存のレンガ壁からスチール金物で持ち出して、スタッコ左官の内壁を建てている。これも執拗に目地を取ることにより面として見せている。また、それら面(や異なる仕上げ)同士は、絶対に接しない。ガラスに対しても全くシーリングは使っていない。すごい。


後述の他の建築もそうだが、すべて落とし込んだり、挟んだりしているだけ。パッキンさえ見えない。隙間無くぴったり兆番や錠でさえ嵌っているだけ(に見える)。

基本的に床は石(大理石?)、壁はスタッコビアンコ、天井はスタッコロッソ、見切りにスチール(黒皮?)、真鍮くらいしか使っていないが、石の仕上げ方が細かく多岐にわたるため全く冗長的に見えない。

しばらく寸法を取りながらスケッチをしていると、教師に引率された学生の団体が来る。写真を撮り始めたので、紛れてこっそり撮る。延べ1時間半ほど、その後カフェでお昼を食べ、後ろ髪を引かれつつ、次に行く。


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Querini Stampallia foundation / C.Scarpa / 1963

■サンマルコ広場の東。広場東角から黄色い標識が出ているので間違えない。

■10e。内部撮影不可。月曜休み。1000-1900。スカルパを見たいなら絶対に見るべき。というか今日見た建物は全て見るべきだと思う。

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再度来た道を戻りオリヴェッティへ。
やはり閉まっている。横に廻ると、裏口の扉が半分開いている。buon giornoと呼びかけても誰も出てこないので、入って見る。中はすっからかんで工事ヘルメットや塗料の缶などがある。工事中で職人が昼休みに行っているのかな、とこっそり見せてもらう。写真で何度も見たテラゾーの床をなでる。ちょっと感動。前回、開いていたのに前まできて中に入らなかった自分を叱りたい。


急いで数枚写真を撮ると、上で話し声が聞こえる。何か打ち合わせをしているようで、自分を見つけると、no,no!と追い払われた。工事中?とか店が変わるの?とか聞いても全く答えてくれない。仕方なく出る。まぁ少しでも見れたので良しとする。

次に安藤忠雄さんの最近できた美術館へ向かおうと、西へ歩くと、スカルパっぽいデザインの店舗があった。写真を撮るため引きをとろうと後ろを見ると、見覚えのあるお店がある。ReneCaovillaという勤めていた事務所で担当させてもらった銀座店のヴェネチア店だった。奇遇なこともあるもので。内装の金は本物の金箔のようだった。いくらくらいするのだろう。

20分ほど歩いてpallazzo Grassiへたどり着くも、休み。よく見たら自分のリストにも書いてあった。調べていたのに読めてない。明後日にまた来るとして、残りのスカルパ建築へ。

Palazzo fondazione Masieriは見つからず。まぁ公開されていないので良しとする。

次にUniversita Ca Foscali Venezia San Sebastianoへ。エントランスのみスカルパが手がけている。到着。エントランスだけなのに一目でわかる。こちらも材料がサイン部以外白大理石のみなのに、仕上げを変えることにより全くそのようには見えない。石と金属を知り尽くしている。トレードマークともいえる段々のモチーフにより入り口のアーチが斜めにせり出してきたかのような動きを感じる。見付と見込みによる陰影も美しい。うまく看破できないが、圧倒的に巧いと思う。

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Universita Ca Foscali Venezia San Sebastiano / Carlo Scarpa / 1979

■住所をggmに打ち込めば間違いない。
■基本的にパブリック無料。現在も大学の入り口として普通に使われているので、多くの学生が出入りしている。
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次 に、アカデミア美術館へ。一部リノベーションを手がけている。6.5e。ROOM 1と次の間のみの模様。Room 2は改装中だったので不明。入り口から展示物が千鳥に配置され観覧者の動線をコントロールしているのは確かヴェローナのCastle Veccioと同じ。ただ、その展示ケースの納まりがすごい。こちらもガラスを全くシールを使わず、落とし込みや乗せるだけで押えている。ガラス小口をV 字にカットし、それを金物の凹みに引っ掛けて留めている。DPG的なスガツネ輸入品にあるような金物も全て真鍮でデザインされている。ここも写真不可なの で、スケッチしながら笑いがこみ上げるくらい凝っている。内装から家具什器まで、密度が、精度が落ちることがない。おそろしい。間違っても同じことを日本 で図面に書いて要求してはいけないと思う。

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Museo Accademia Renovation / Carlo Scarpa / 1959
■行き方
多くの場所に標識がサインが立っているのでそれに従えばわかる。住所のとおり。
■大人6.5e。0815-1915(月曜は1400まで)
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出ると日も暮れかかってきたので急いで最後のIUAV gateへ。ここも入り口の門のみのデザイン。
しかし、最後もやはりやってくれる。打ちひしがれる。


ブリオンヴェガのようなコンクリート打ち放しだが、まず引き戸となる門扉の吊り方がすごい。滑車から作っている。また可動なのに分厚い石が貼られている。少し引いてみたがびくともしない。

ガラスを見ると、ここもシールがない。よく見ると両脇は金物に接しておらず、上下二編で留まっている。触って見ると、28mmのガラスが上下ともV字 にカットされており、その形に金物を合わせ載せている。その金物も1mmピッチで段々になっている。もはやミニチュア。おそらくガラスをセットした後、外 側の枠を六角ネジで留めている模様。

枠のひねりを押えるために、斜めにアングルが走っている。それもちゃんと角を外しており、開放感の邪魔をしていない。 そのまま枠を突き抜け吊り金物まで伸び、そこにサインとなる石がへばりつく。それにより上部の滑車金物が飛び出して違和感を感じることがなくなっている。 もういちいちすごい。

しかも、よく見ると上部のコンクリの庇は片持ちで、30mmほどの隙間を空け片側の壁には接しておらず浮いている。誰も見えないのに(こんなマニアックな同業者くらいしか)。おそろしい。

また、面する広場との敷地境界線と既存?建物とは面の方向がずれているため、庇は建物に、壁は広場に合わせて微妙に傾きがずれている。それによりどちらに正 対しても違和感がない。左の壁、建具、門、右の壁、とそれぞれレイヤーのごとく面が全て違うため、奥行き感が出ている。

日が暮れるまでしばらく立ち尽くして色々推理しながら見続ける。ここも現役の大学エントランスなので多くの学生が行き交う。今日でこんなにお腹いっぱいなら、明日はどうなるのだろう、と空恐ろしくなりながら、後にする。



帰 り道、行きしなにいくつか賑わっているpizzeriaやtrattoriaの値段をチェックしてプロットしていたのだが、そのうちのひとつの pizzeriaに入る。今回歩いた中ではヴェネチア一安かったが、今までイタリア各都市で食べた立ち食いピザの中で、断トツに美味しい。(ちゃんとした ところに入ればもちろんもっと美味しいと思うが、まだ節約期間なので。。。あしからず)。生地が薄く、ヘタまでさくさくしている。直径25cmくらい の1/8くらいと結構大きい。マルゲリータで1.6e。そのほか2e。二枚も食べればお腹一杯になる。


ローマ広場に寄り、明後日の空港行 きバスを調べ、ローマ広場水上バス乗り場前にあるスーパーで買い物し(歩き方にはヴェネチアにスーパーはない、と書いてあったしロンリープラネットにも 載っていなかったが、ある。ここ以外にも数軒あったがここが一番大きい。)、水上バスで帰る。ネットにつなぎ、ログをアップなど。24:00就寝。



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