140908 燕〜常念〜蝶ヶ岳縦走


久しぶりに北アルプスへ行ってきました。
今年は楽な道を歩きたいなと思い、燕岳〜常念岳〜蝶ヶ岳という稜線歩きが気持ちいい道を三泊四日で縦走してきました。

◆初日
登山口の中房温泉前に着いた時には既に小雨がちらつく。北アルプスの三大急登と呼ばれる道を延々登る。
9月に入り、しかも平日とあって、人も少なめ。

すぐに霧の中に入る。聞いていた通り、道はそんなにしんどくない。合戦小屋を過ぎたあたりから、雨が本降りになってくる。

なおも登っていくと森を抜ける。もやの向こうに燕山荘が見えてきた。

着いて雨の中、テントを設営し、ほっと一息。雨に濡れて寒いので、着替えて暖かい夕食を作り食べる。ここ数日あまり眠れていなかったのもあり、横になったら寝てしまっていて、起きたらもう辺りは真っ暗だった。

雨は全く止む気配がない。外に出るのも億劫になり、そのままもう一度寝てしまう。

◆2日目

翌朝、快晴。明け方頃、テントを叩く雨音が止んだなと思って外に出たらこの空。寒さにビックリして奥歯をがたがた言わせながらテントに戻り、着込む。温度計が壊れていたけれど、おそらく体感的に気温5度弱くらい。お湯を沸かし朝食を食べながら、朝日を待つ。少し太陽が見えてくるとぐんぐん気温がましになる。

みんなカメラを持って、太陽を待ち構えている。

山荘の人達もご来光を待つ。


5時20分頃、朝日が昇る。雲海がきれい。かなり遠くの山まで見える。


反対側の東を見れば、朝日に照らされた槍ヶ岳がくっきりと見える。今日からこの姿を拝みながら稜線歩きとなる。その北には2年前に縦走した大キレットもよく見える。あんなところよく行ったなぁと我ながら思う。少なくともテントを担いで行くべきではない。今思い返しても、本当にしんどかった。


朝日を浴びる燕山もとてもきれい。
日も上がったので、燕岳へ。片道20分くらい、ほんとに朝の散歩がてらくらいの感じで登れてしまうのがすばらしい。


10分くらい歩いて燕山荘を振り返る。


燕岳2762.9m頂上到着。山荘の方を見る。すばらしい天気。


燕山荘への帰り道、めがね岩から燕岳山頂をのぞき込む。


テントを撤収し、常念岳へ向け出発。なんていい天気。結局この日が一番天気が良かった。この1日があっただけでも、来た甲斐があったと思う。右手に穂高、槍ヶ岳、北に連なる山々を眺めながらの稜線歩き。


西を見ると、少し雲が上がってきている。


この花はなんというのだろう?大天井岳への稜線で見かけたが、他では見かけなかった。植物図鑑を買おうと思っていたのを思い出した。


大天井岳までは本当にきれいに稜線を歩いて行く。稜線を境に、右が松本市、左が安曇野市、山の稜線が自治体や県の境界線になっていることに今更気づいた。


ずっと西から雲が攻めてきているが、尾根に当たって、なんとか止まってくれている。東側はずっと快晴。槍ヶ岳も今日は展望が良さそう。奥に見えるのが2699mのピークかな?大天井岳までもう少し。


最後にほんの少しの鎖場と梯子を下った。


喜作レリーフから槍ヶ岳に続く、喜作新道方向を見る。前を歩く人は皆こちらへ向かわれた。自分は分岐を左に、大天井荘方向へ。


歩いてきた尾根を見返す。西から上ってくる雲が、尾根にせき止められているのがよく分かる。


大天井荘到着。日差しがきつい。小屋の陰に座って昼食をとる。まだまだ尾根は続く。


昼食後、荷物を置いて、空身で片道10分の大天井岳へ登る。12時頃になって槍ヶ岳にもさすがに雲が出てきた。


大天井荘に戻ってきたら誰も居ない。まだまだ尾根歩きは続くが、雲も上ってきて雷も怖くなってきたので先を急ぐ。


一時間ほど歩いて、東天井岳を巻いて下るあたりから、完全にガスの中に入った。


すぐに視界がなくなる。が、一本道なので迷わない。しばらく歩いて動く影が見えると思ったら猿の群の中にいた。


道端に落ちていた糞や松の実の食い散らかした跡は彼らの仕業だったのか。人間に慣れていて、こちらから音を出さないと全然逃げない。


森林限界を超えて常念小屋へ向け下っていく。14時40分常念小屋着。霧が凄い。テント設営し夕食を食べて一眠りしたら、夕方。夕日が見られるかとフライシートを開けると、完全に濃い霧に覆われているので今日もあきらめて眠る。


夜、外に出てみるが雲が多く星もあまり見えない。月がかろうじて雲の向こうに見えた。

◆3日目


起きると、まだ幾分霧は残っていたが、上の方は晴れてそう。急いで朝食を食べてテントを片付ける。


東を見る。昨日は安曇野市街がよく見えたが、完全に雲海に覆われている。


常念岳へ、つづら折りの道を延々上る。ここも小屋から片道1時間。頂上付近は岩場でちょっと危ないが、道も基本的に上りやすい。多くの人は小屋から空身で登られていた。


途中から常念小屋を見返す。昨日歩いてきた大天井岳に続く尾根がよく見える。


頂上付近。もうすぐ。


4,5人がカメラを構えてじっとしていたので、何ですか?と訊いたら雷鳥がいた。少し遠くて頭の赤いところは見えなかったが、その首長のシルエットは美しかった。


常念岳2857m頂上より大天井岳方向を見返す。雲がめまぐるしく動き、360度展望が開けた!と思うとすぐ塞がれる。しかし、ここは頂上も広くすばらしい。展望盤があるので、地図と見比べながら山々を同定していく。北に剣岳、南に北岳までかろうじて見えた。富士山はぎりぎり見えず。槍ヶ岳〜穂高連峰の大キレットもよく見える。横から見ても本当に恐ろしい。


30分くらい、かなりゆっくり堪能してから、蝶ヶ岳方向へ歩き出す。奥に見える人のところから下っていく。上から見ると危なそうだが、下っていくとそうでもなかった。


蝶ヶ岳側から頂上を見返す。まだまだ頂上を堪能する人がいっぱい。


向かう尾根は雲に包まれ始めている。


常念岳から長い下りの岩道を延々歩く。


奥に見える(たぶん)2512mのピーク手前のコルでお昼にする。ここから登ったり下ったり。右手に槍穂高を望めるらしいが、完全にガスに包まれて何も見えない。


2512ピークを越えて下り途中から樹林帯に入る。一気に湿度が上がって蒸し暑い。このピークが蝶槍だと思って歩いていたが間違いで、このピークは2592m、「蝶ヶ岳へ」という方向を示す標識だけがある。下っていく方向が尾根を外れ一度東になるので少し不安になったが、2万5千でよく見るとその通り、一度谷に少し下ってから尾根に戻っている。道はその通り、20分くらいか下ってから南へ平坦になった。


2462mのコルを越え、最後の長い登り。少し小雨が降ってくる。まだ13時半くらいで時間も余裕はあるし雷も大丈夫そうで、道も確かなのに、濃い霧に包まれ一人だと不安になるのが不思議。地図を見て方角を確かめながら広い尾根を登る。追い越してきたおばちゃん集団の笑い声が遠くに聞こえて頼もしい。


(おそらく)2664m蝶槍のピーク。TOPとだけ書いてある。ここから槍穂高がきれいに見えたろうになぁ。それどころか10m先も見えない。

あきらめて蝶ヶ岳方向へとぼとぼ歩く。頂上付近で完全にガスに巻かれると、違う惑星に来たみたいな風景だと毎回思う。


そろそろだよなーと思っていたら、急に目の前に蝶ヶ岳ヒュッテが現れた。14時半、やっと到着。当初の予定ではそのまま徳沢まで下ろうかと思っていたが、この霧だし時刻も遅い(予定より2時間も遅れた)ので今日はこれで終わり。


風が強い。風速計がびゅんびゅん廻っている。おかげでテントを設営するのに苦労した。手を滑らしたら彼方へ丸ごと吹っ飛んで行きそうだった。


設営し、荷物も置いて、小屋でホットミルクを飲んで一息つく。風は夜になるほど強くなり、テントが揺れる揺れる。ばたつく音のおかげでなかなかよく眠れなかったので、持ってきたジョン・クラカワーの「荒野へ」を読み進める。こんなところで読むにはぴったり。構成や文体、その姿勢が角幡氏が影響を受けたというのがよくわかる。半分ほど読んで疲れて眠れないけれど横になる。

◆4日目
夢を見て、眠れていたことに気づいた。前2日のように、と期待もむなしく、起きても天気は変わらない。かろうじて雨は降っていないが相変わらず風は強く、霧は濃い。といっても今日はもう下るだけなので、気も楽。6時半過ぎに撤収し出発する。


長塀山を越え、長塀尾根を延々下る。やっぱり右膝が痛んでくるので、たまに伸ばしながら歩く。歩き方が悪いのか?サポートタイツでも履けばましなのか?痛み的に関節の問題のようなので、鍛えてどうにかなるものでもなさそう。それ以外は足も身体もまだまだ大丈夫なのでもったいない。


徳沢に辿り着くとさすがに登山客でいっぱい。コースタイムより随分早く着けた。そのまま上高地まで気持ちのいい木立の道を歩く。
河童橋まで着いて携帯の電源を久しぶりに入れ、バスセンターに電話したら京都行きのバスが残り一席あったので予約する。毎度おなじみ上高地アルペンホテルへ外来入浴へ行く。前回は開始前からロビーに下山客が大勢たむろしていたのに、全然いない。シーズンをずらすとこんなに違うのか。お風呂に入り、お昼をお腹いっぱい食べて(上高地アルペンホテルはランチが変わっていて二種類しか選べなくなっていた。ので河童橋前の2F河童食堂へ。ここは広くて良かった)、バスセンターから帰路に就く。

今回のコースは途中大天井岳まで表銀座コースと呼ばれるだけあって、さすがよく整備されとても歩きやすかった。おそらく同じ日程で槍ヶ岳方面に分かれた人も晴天の頂上からの眺めを得られ、北アルプス初めてには確かにうってつけ、すばらしいコースだと思う。が、常念岳からの360度の眺めも本当に捨てがたい。気持ちよすぎて、今までで一番頂上でゆっくりしてしまったくらい。
何はともあれ、眺望が得られた快晴は4日中1日にも満たないけれど、十分楽しい縦走でした。



No Responses to this post

This post has no comments yet.

Leave a Reply