190824_京町屋の温熱環境計算と計測


2017年7月〜2019年6月まで、2年間、北白川環境設計道場という勉強会に参加していました。
一旦卒業とさせてもらいましたが、振り返りと勉強会の紹介も兼ねて最後の成果発表会でのスライドをアップします。

■会の概要
月一回5h程度で、基礎→応用→実践コースと半年ごとに3コースを順番に学びます。
「温熱環境設計の指標や単位を、その意味から理解し、手計算で愚直に計算することによって値の意味を身体的に理解できるようになろう」という趣旨(だと理解しています)。なので、計算プログラムなどは極力使いません。

基礎;座学とひたすら手計算。
応用;会の会場となっている町屋を題材に外皮性能計算と改修案の提案
実践;各自の興味あるテーマでの自由課題。

■「部分的な断熱改修をした京町屋の計測」
実践コースでは、参加する設計者それぞれが実務で取り組む案件であったり自邸を題材にしたりしていますが、私は3年前に部分改修した事務所兼自宅の町屋を題材にしました。

1.外皮性能の算定
→計算上、断熱材付加にどれほどの効果があったのか?

2.温度の計測
→実際の冬期気温を各所で測定し、グラフ化。

3.サーモカメラでの測定
→体感での温冷感をサーモグラフィー画像で計測してみる。

以上をまとめました。


1.外皮性能の算定:
改修前の外皮を部位ごと、仕上げごとに求積します。


それを部位ごとに、改修前、後で熱抵抗値Rがどう変わるかからU値:平均熱貫流率、を、計算過程を図示し透明化しながら求めます。

当改修では、床の全面張り替えに伴う断熱、小屋裏へのグラスウール敷き詰め断熱、1箇所のアルミサッシのペアガラス化、を行いました。


壁や床の場合は特に、柱や根太といった熱橋(ヒートブリッジ)を含むので、そこも鑑みて計算します。


各部位のU値×面積=部位事のq値(熱損失量)を求め、それを再度、全外皮面積で割って、UA値(外皮の平均熱貫流率)を算出します。

UA値としては新築住宅に比べればかなり高い(断熱性が低い)です。
真壁の土壁だったため内壁を漆喰塗りしただけで壁は無断熱のままですが、熱損失割合のグラフを見ると、壁からの損失が全体に占める割合が大きい(40%近く)ため、他を断熱しても全体からすれば効果が小さい、ことがわかります。
(加えて気密性能も間違いなく計測不可なくらい、ないに等しいのですが、、)


データロガーを、なるべく暖房器具(石油ストーブ)からの距離や高さの違う条件の位置に置いて、真冬の1ヶ月間温室度を測定しました。


測定結果を、気象庁ウェブサイトからDLした外気温データと共にグラフ化し、日中に居た(暖房していた)日と不在の日が並び、外気温も低かった日を選んで拡大しました。


1階事務所はほぼワンルームなのですが、同じ部屋でも足下と頭の高さで随分気温が違うことがわかります。また、2F床や階段の気密が緩いからか、暖房のない2階も1階の暖気(と日射)で暖かくなっていること、日射のある日は南の縁側もかなり暖かくなることがわかります。


暖房していても最大足下と上部では5℃もの室温差が!そりゃ足下寒いと感じるはず。(ちなみにサーキュレーターも廻してはいます。)暖房を切ってからの室温の下がる勾配から、外皮計算における壁からの熱損失の大きさに納得です。


サーモカメラの画像を見ると、断熱された床と、されていない壁の足下や窓との対比がとてもわかりやすい。(表面温度しか感知されないので、空間上の温度を知るべく、天井から紙を垂らしています。)ここでも壁の熱損失の大きさが可視化されています。


毎日暮らす建物の温熱環境を、計算と実測から可視化できたことは、とても今後の設計の参考になりそうです。

主催の三浦さん、毛利さん、中野さんはじめ、共に学んだみなさま、とてもお世話になりました。
(そして今後ともよろしくお願いします)



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