お土産の蟻鱒鳶ル謹製コンクリート       

五条のHAPSにて、「ひとりでビルを建てる男 岡啓輔がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」という高円寺臭が漂うタイトルのレクチャーに行ってきました。

 

 

会場のHAPSは去年出来たスペースで、古い町屋を当日の登壇者でもあったRAD木村さんがワークショップを催しながら改装されたスペースだそうで、夜の閉館後だけ観覧できる(外から)入口の土間ギャラリースペースの奥にある、8畳間くらいのこぢんまりした場所で定員20名のコンパクトな会。膝をつき合わせるような感じでした。

蟻鱒鳶ルを作り始めるまでの経緯を、「やっと最近そこまでは整理できてきた」と岡さんから語り始められました。

工専を出て土方、鳶職、鉄筋工、型枠工、ハウスメーカーの大工と建物を作る技術を一通り身に付けながら、一級建築士もサクッと取得し、その一方でモダニズムの精神で、正解なデザイン、恣意的なものを消し去ったデザインを志してガラスの球体をくり抜いた理想の家のコンペ案にて同年代の建築家や高名な批評家から絶賛を得る。

けれど、そもそもモノを作りたくてデザインしたくて建築を志したはずなのに、デザインを消す方向に向かう自分に疑問を感じ、挫折感を味わい、「家くらい造れるんでしょ?」という奥さんの一言から設計図を書かず、即興で考えて実験しながら東京のど真ん中に自邸を自分で造り初めて早8年。

建築プロパーでない人が作っていると勝手に思っていたので、全然ど真ん中に突っ込んでいってそこを通り抜けた上で今がある、というあり方が知れてとても納得がいったし、より実物を見たくなりました。

訥々と語られるそのリズムが印象的でした。時折話の方向を思い出すように入る無言の間に、聴衆の前でその音のない間に全く動じない所に肝の大きさを感じました。人前で話すリズムとして、こういう重みのあり方もあるのか、と感心させられました。

ご本人は、同世代の塚本さんや西沢立衛さん、中谷さんらに比べ、その優秀さよりも持っている熱量の大きさの違いに差を感じたと仰っていましたが、ちらっと見せられていた日本の建築を見て回られていた頃のスケッチブックや手縫いのズボン、そして蟻鱒鳶ル自体から察せられる熱量は半端なものではない。本当にいい顔をされていた。

長丁場4時間のイベントながらあっという間。
東京に行った際は現場に繋ぎを持って伺いたいです。



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