どうも、松本です。めっきり寒くなってきました。
さて、本日11/1発売の建築ジャーナル2010年11月号に、当旅行について書かせてもらった記事が掲載されています。たった1ページなのに表紙に名前が載っているのには思わず笑ってしまいました。恐縮すぎます(汗)。
3号続けて掲載される予定です。
建築専門書店、もしくは大きな本屋さんに置いています。京都なら大龍堂やジュンク堂BAL店、四条店、大阪なら柳々堂、紀伊国屋梅田店など。
よろしければご覧ください。

以下原稿の文章のみですが転載します。

 ふと思った。若い時にしかできない、ということはないのではないかと。

 初めて海外旅行に出かけたのは大学3年の頃、東南アジアを手始めにヨーロッパを1ヶ月ほど廻った。時期も行き先も建築学科の学生としては常套だろう。けれど、それから10年ほど経った今でもその時の記憶は意外としっかりとした手応えを持って残っている。卒業して勤め出し、嵐のような忙しさに追われ、気がつくともう30歳。30を過ぎると人生の長さよりも短さを実感として感じるようになってくる。もう一度より長く、違う世界に行っておきたいと思った。

 大した実績のない僕は留学や就職でなく、最も手軽な旅行という手段を選んだ。とはいっても仕事や試験もあったため、すぐに出発とはいかない。それならばとじっくり準備に時間をかけた。

 もしあなたが、世界中見たいだけ建物を見て廻れる、と言われればどうやって行き先を決めるだろうか?もうかれこれ10年以上建築を学んでいれば、見たい建物は山ほどある。次はないかもしれない旅行だから、取りこぼしは避けたい。ならば、まずは徹底的に見たい建物をリストアップしていく。ざっと900件近くに上った。ガイドブックは多数あるが、肝心の行き方が載っていないことが多い。地図も粗すぎる。そこで住所を調べ、全てをグーグルマップにプロットする。最寄駅やバス停もわかる。ピンは膨大な数に上るので、一軍を赤、二軍を青と個人的重要度を色分けする。その色合いと粗密を追っていけば、およそ立ち寄るべき街は示される。完成した世界地図を眺めると異様にヨーロッパと北アメリカに偏ってピンが立っている。何かおかしい気もする。教育とメディアの情報が、それに育てられた価値観の偏りがよくわかる。

 次に交通機関を洗う。今回大陸間移動など長距離移動にはワンワールドの世界周遊券を使用したが、ヨーロッパ内はバスよりも安い格安航空券もあり、選択肢が多い。ひとつひとつ比較検討し、経路を決めていく。今やインドの列車からブラジルのバスまで、日本に居ながら価格もわかるしチケットも買える。インターネットによる情報の普及で10年前とは計画の立て方がまるで異なっていた。

 そうして全ての行き先と交通機関の下調べを終え、冊子になった建物リストと予定表を手に、2010年1月に出発した。全27ヵ国、およそ110の街を7ヵ月で駆け足で廻った。一般的民間人でも、これだけの短時間でまとめて世界中を見て廻れるということは今でこそ可能なことだろう。

 始まりはインド。断っても引かない客引きや排気ガスと見分けがつかない濃霧、止むことのないクラクションが手荒く迎えてくれた。そんな中、異国から来た二人の巨匠の仕事を見た。ルイス・カーンのインド経営大学は、コルビュジェに比べ不思議なくらい彼の地に馴染んでいた。厳格に見える大振りな幾何学は、気候と気質にとても合っている。煉瓦造という構法と、影を作り風を通すという目的に形がとてもよく対応している。実務をしていると、どうしても手が届く範囲のディテールに目が行きがちになってしまうが、こういった大きな視点の重要性を痛感した。個々の建物よりも街や人、市場や食物に深く圧倒されながら、目まぐるしく最初の国を後にした。



4 Responses to this post

  1. sawa_mills says:

    おお!!表紙だ表紙だ!!
    明日柳々堂に走って見に行きます!!

  2. matsumoto says:

    おおはやい!
    走るほどじゃないですよー。

  3. sawa mills says:

    12月号も出てたねーー!!一気にNYですか!

  4. まつもと says:

    おおーはやい!チェックが。
    NY入りは来月最終回です。
    もう入稿したので気楽です。
    またよろしく~

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