ダラス同様、成田も快晴。陸がよく見える。離陸時に見たアメリカの大地、特に畑と家々のスケールが全然違う。もちろんこちらが細かい。空から見ると解像度の違うグリーン階調のモザイクをみているよう。青々とした田んぼが本当にきれいだ。これは誇っていいと思う。
12時半成田着。ターミナルまでモノレールで移動し、イミグレ、税関を通る。さすが日本。スムーズだ。早い。税関を出て地下に降り、シャワールームを借りる。30分500円でタオル、シャンプー、ボディウォッシュも使え、ドライヤーまである。こんなに安くていいのだろうか。シャワーももちろんとても熱く、水圧はすごい。こんなにきつい水圧、何ヶ月ぶりだろうか。日本のインフラはすばらしい。
すぐ隣にある日本医科大学付属病院に行く。日本興亜旅行保険のキャッシュレス診察対応。咳と足の水ぶくれを念のため診てもらう。研修医しかいないが、薬がもらえるだけでもありがたい。咳はただ単に風邪じゃないか、足は皮膚科で診てもらって、と。薬をもらい、すぐ予定時刻の電車に乗るために京成線に急ぐ。
切符を買おうと事前に調べておいた乗り換え駅を探しても、日本語なのにいくらかわからない!おそろしく複雑。これは絶対外国人には無理だろう。駅員さんに訊いて購入。このおそろしく複雑、細分化されたシステムが明文化されインフォメーションに出ているだけでもすごいけれど。東京国立近代美術館へ向かう。
電車は土曜のお昼だからかとても空いている。車窓からの風景も車内の風景ものどか。成田を使うのは初めてなのだけれど、空港駅のすぐ近くから建物が密集して建っている風景は他の国では見たことがない。どこまでも見渡す限り小さなビルが続いていく。あぁ日本は狭く人が多いのだ、ということを如実に実感させてくれる。昔、初めての海外旅行でタイから帰ってきた時は、関空からの車窓に映る風景にとても違和感を感じたのに、今回は不思議なくらい感じない。たった7ヶ月くらいでは抜けきれないくらい、風景が目に馴染んでしまっているのか。客観的に見れない自分に少し驚いた。
日本橋で東京メトロ東西線に乗り換え、竹橋下車。東京国立近代美術館へ。明日までの「建築はどこにあるの?」展を見に来た。最後の二日、しかも週末なのでオシャレな若い学生っぽい人達が美術館へ向かう中、前後にバックパックを担ぎ、手にも大きな鞄を持つ姿は明らかに宇浮いている。16時過ぎ、受付で荷物を預けて、入場。間に合った。
正直なところ、各建築家の展示より一番驚いたのが、オシャレできれいな若い男女の多いこと多いこと。コペンハーゲンの建築協会ビルに行ったときも、3XNの展示をしていて、かつちょうどペチャクチャナイトの日だったのもあって、熱気むんむんな数の若いオシャレ男女が模型写真やCGをデジカメでパチパチ撮っているのを見てどこの国も同じだなぁと思ったが、さすが東京、それ以上だ。建築がポピュラリティを得てきているのか、建築学科の学生がオシャレになったのかわからないが、本当に熱心で感心する。他の展覧会なら、ここまで熱心に写真を撮り、メモをする学生が多いだろうか?
入り口には中村竜二さんの展示。圧倒的な連続による効果。三次元変形グリッドによる視界。すかすかなボリュームの充填、というよりその連続性による効果の方が自分には面白かった。公共的大規模建築において、今昔問わず連続性による効果は見てきたが、そういう大規模でなくても、密度を上げれば小さなスケールでも連続という手法は使えるのだなぁと感じる。坂本一成さんの姿が見えて、どこに足を止められるのだろうとそっちの方が気になったりする。
中山英之さんの展示。かがんで見上げながら、実寸スケールを想像する。コンペ案のドローイングの実物(出力かな?)が見れたのが嬉しい。鉛筆手書きのドローイングの連作が、イームズのフリップブックみたいだ。中山さんの内では、スティーブンホールの水彩スケッチのような静的イメージでなく、人や視点が動く動的なイメージがまずありきなのかな、とか思ったりする。ドローイングの展示する高さもわざと低い位置にしてあり、観覧者の視点をこの1/3スケールの世界に導いている。
鈴木了二さんは相変わらず渋い。光源の配置を、天井から一様に、でなくもっと闇を強調したらもっとよかったのに、と思う。オーソドックスかもしれないが、普通に模型がいい。覗いて楽しい。
カーテンをくぐり、内藤廣さんの部屋へ。墨出しレーザーから着想したという赤いレーザーのストライプの道ができている。天井の光源から床に向けて立面的には三角形の光線が出ているようだ。ここでシャボン玉を吹いたらきれいそうだなぁ、と思ってももちろん手元にはない(し、怒られそう)。布を借りてひらひらさせて見るも、一人なのでそのひらひらがどう見えているかが今一近すぎてわからない。残念。フリスビーとか投げても楽しそう。人体であれ布であれ、異なる仕上げのボリュームを一旦闇にて仕上げを剥がし、赤いストライプグリッドに変換することで、まさに仕上げを持たないボリュームそのものに還元し、比較可能にしている。
続いて菊池浩さん。前評判でもサイトを見た限りでも最も期待していたのだが、今ひとつ楽しめなかった。仕掛けの工作的興味は甚だしくあるし、いつもながらその手際の良さに感嘆するも(何度も行ったり来たりしたが、カメラの位置とプロジェクターの位置の関係の計算が読み切れなかった。さすがだ)、結果としての映像が今一しょぼい。けれど、全作品の中で最も設計の難度が高いし、飛距離もあった。
最後に伊東さん。前評判では、自身のプロジェクトのカットペースト、焼き直し陳列じゃないか、などあまり良くなかったが、自分は一番楽しめた。一番本人が関わっておらずスタッフに任せた感はあるが、それぞれの幾何学モデルが生み出す空間を、モデルを見ながら想像するのは楽しい。
一巡し、ショップでカタログなどを購入すると、もう17時前。ロビーの菊池さんのテーブルを見て行く。白い単板貼りの天板と四方縁無垢材との取り合いがわからない。凹凸ではめ込んでいるのか、FBもしくはチップでかすがいを中に仕込んでいるのか。確かに本を読むのにとても具合がいい。無垢縁の下側にもテーパーをつけている所が目が行き届いているなぁと感心。
向かいの中庭にはアトリエワンの動物たちがいる。2階に首を突っ込んでいるキリンを二頭配置しているのが上手い。この二匹がいることで断面的に上階と関係性を構築しているし、中庭を歩く人も上も見上げるようになる。空間的だ。
17時になったので、荷物を担いで日比谷線で中目黒へ。中目黒駅に着くと、ちょうど今日が夏祭りらしく、浴衣をきた女の子などでとても賑わっている。友人が去年オープンしたお店capriceを見に行く。駅から歩いて5分ほど。おおよその場所は頭に入れてきたのだが、目黒川を渡ってから迷う。川縁のお店前ベンチにいた店員さんに訊いたら、知らないなぁと言いながら、親切に携帯で検索してくれた。日本人は親切だ。どこから来たのですか?と訊かれて、どう答えたらいいのかちょっと迷う。確かに荷物が多すぎる。
結局そこではわからず、迷っていると友人から電話がかかってきた。行き過ぎていたらしい。再会をビールで祝す。日も暮れてきて涼しい。お店の前のベンチでぼーっと夕涼みしていると、あぁ日本は平和で楽だなぁと心底思う。
お暇して、教えてもらった近くのおでん屋さんで別の友人と夕食を食べる。知らない間に結婚していたり、子供を産んでいたり、浦島太郎気分を少し味わう。22 時半、駅で別れて新宿へ。24時の夜行バスで京都へ帰る。海外であれだけ夜行バスに乗っていたのに、日本に帰って東京から京都に移動するのに、この歳で夜行バスはちょっと、と思ってしまう自分に驚いた。気分は既に日常に戻っている。バス乗り場は若い人でごった返している。京都まで4300円。安いが、それでも海外のバスに比べると距離と時間から見れば高い。延べ200時間以上はバスに乗っていたと思うので、片道7時間は一瞬に感じてしまう。
バスが到着し乗り込む。予約数に併せてバス台数を増発している模様。発車早々、消灯。日本のバスは、乗客はなんて静かなのだ、と感心。すばらしい。やたらいちゃつくカップルや、喋り倒すカップル、二人組、スピーカーで音楽を聴く若者もいない。リクライニングを倒す時は、一言断りを入れる。感動的だ。おかげで思ったより眠れる。
翌朝6時半、京都駅着。もう夜は明けている。日本の夜明けはブラジルよりかなり早い。セミが元気よく鳴いている。帰ってきた。三条で朝食を食べて自宅に戻る。これにてツアーは終了。
すごい!さすが松本さん!!
やっぱり東京でもちゃんと観察眼を光らせ、何かを観に行ってたのですね。
私は昨日やっと初めて国立新美術館に行ってきましたが、
展示はなぜだか興味が示さず一つも見ず、
カレーを食べて、たまたま来ていた佐野史郎を見て興奮しておわりました。
明日の報告会いきたかったです。東京でもやってください!
good luck!
おお、嬉しいお言葉ありがとうございます。
誰だ、こんなに写真撮ったのは!と自分に突っ込みながら整理の真っ最中の松本です。
たぶんjugemのシステムのせいだと思いますが、
どちらさんでしょうか?名前が消えてしまって。。。
「私」「美術」「東京」「松本さん」だとあの人か?
あれ?ほんとうだ!名前がないですね~。
失敬!!
オランダの犬でごわす◎
ああやっぱり!
無事一時帰国中ですね。
facebookの写真、見させてもらいましたよー。