1107-1111 Fukushima


2011年7月から11月まで、福島県は郡山に滞在し、福島県全域の地震で損傷を受けた建物を見廻っていました。

7月に初めて郡山駅に着いた時には駅前の普通さに驚きましたが、9月にはヨドバシカメラが移転開店し、続いてタワーレコードも営業再開し、12月に行った時には夜は駅前にイルミネーションも輝いて、なんだか嬉しくなりました。一般紙では放射線量について悲観的なニュースが多い印象を受けますが、彼の地は普通に元気です。

建物、主に住宅を見廻れたことは(こういう言い方は不謹慎かと思いますが)建築士としてとても勉強になりました。各構造の建物が地震動を受けてどのように損傷を受けるのか、内外部ともにくまなく見させて貰えるのは、地震動による損傷と経年変化による損傷とを見分ける視点を得られました。また、これまで建築家などある意味特殊解である住宅は写真であれ実物であれ数多く見てきましたが、築年数も様々で、地域の工務店やハウスメーカー、ごくたまに設計者の建てた家をランダムサンプリング的に網羅して見られたことは、日本の一般的住環境を知るという意味で、よい経験になりました。そこに住んでいる方々に震災当初からの話を聞くことは、村上春樹のアンダーグラウンドを地でいくようでした。

車で毎日走っていると、地形の違いもよくわかります。東の海側からいわき市や原発のある浪江町などと北に相馬郡を持つ浜通、山を挟んで福島市郡山市を含む細長い平地の中通り、猪苗代湖や磐梯山安達太良山などを挟んで西に会津若松士と大きく3つの地域に分かれていますが、もう8割が山、という印象で、山と山の間に町がある感じ。逆に言えばそれだけ自然がとても豊かで、田んぼや畑、果樹園が山の間にどこまでも続く道なり。原発事故さえなければ住むには本当に良いところなのだけど、という地元の方の言葉はまさしく。今年の桃も梨もとても甘かった。

福島で見た建物や場所を少しだけアップします。

いわき平競輪場/日本設計

茅葺きの家々が残る大内宿。
個々の家よりも、ゆるくカーブしながら坂になっている建物配置に感心(計画的ではなく自然発生的なものかもしれないけれど)。奥へと誘う見通しの適度な抜けなさと、家々のファサードが重ならず見渡せる並び。身体が勝手に奥へ奥へと進みたくなる。

入り口から見通し

一番奥からの見返し

変形洋風トラス?珍しい。上部が通気のためか開いている蔵が多い。

法面の土留めのデザイン。美しい。

隈研吾さんの川フィルターは地震で被害を受けており、営業していたおそば屋さんは閉店してしまっていました。外から見えるだけでも天井が落ちてしまっていたり。構造躯体自体は見える部分では損傷ないようでしたが、前面駐車場は完全に隆起してでこぼこになっていていたたまれない。

川/フィルター/隈研吾

郡山うねめ祭り

大友良英さんら主催のFESTIVAL FUKUSHIMA。何よりもロケーションがすばらしい。地形と行為がとても合っていて、演奏者と観客の垣根が(物理的にも心理的にも)とても低いのが気持ちいい。みんなでその場をつくっているという感じ。そもそも商業的でないからかもしれないけれど、近年ではこういうイベントは久しぶりな気がしました。

FESTIVAL FUKUSHIMA! 広げられた大風呂敷

オーケストラFUKUSHIMA!

磐梯熱海スカイラインの頂上から歩いてすぐ登れる1707mの火山。火口壁の稜線も一周1時間もかからない。岩や砂礫の作る形や色がとても面白い。

吾妻小富士の火口全景

郡山から南へJR東北本線で一駅の安積永盛駅から徒歩5分のカフェニジョウヒピン。建築学科のある日大工学部も近い。
セルフビルドでなされた内装は家具や調度品に至るまで(意図の)隙が全く無くて、こんなもの作られたら僕たちは何をすればいいのだろう?と途方に暮れそうなくらい良くできている。2階の各テーブルは全て異なり、ちょうど他にお客さんも居なかったので全ての場所に座らせてもらったけれど、どの席も居心地が良く、その席で座ったときの印象をちゃんと丁寧に考えて作られていて、かかっている音楽も心地よく、静かな夜にはいくらでもゆっくりしてしまいそうなお店。建築関係者は郡山に来たら絶対行ってみたらいいと思う。教えて貰ったニキシー管時計は帰って必ず作ります。

ニジョウヒピン@安積永盛

紅葉@夏井川渓谷

国指定天然記念物 爺スギ婆スギ



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