ハイランドからグラスゴーに帰り着くと既に夜。Buchanan Stは犯罪率抑制のため青い街灯にしているそう。建物の照明の色との対比がきれい。
翌朝から午前中3時間の英語の学校Live Languageに通う。事前にメールで貰っていた簡単なペーパーテストを送り、木曜のグラスゴーに着いた日に簡単なインタビューを受けてクラスを決めて貰う。僕はたった一週間だけど、クラスは4月から始まっている。自分以外は皆最初から受講しているのかと思っていたらそうでもなく、各人ばらばらで、自分以外にもう一人のクラスメイトがスペインの大学に戻るため今週一杯で帰って行った。そんなカッチリとしてないシステムが気楽でよい感じ。
「あなたにはこのクラスは少しハードに感じるかもしれないけれど、まぁじきに馴れるわ」とインタビューで言われた通り、最初の授業はとてもハードで、授業が終わってから近くの公園(KervinGrove park、とても気持ちの良い公園!)で昨晩食べきれなかったケバブのテイクアウェイを食べた後、しばし呆けてしまったほど。二日目は行くのが憂鬱だったけれど、三日目から楽しめるようになってきた。しかしまぁ皆よく喋る。国籍は多様で、スペイン、アルゼンチン、リビア、パキスタン、トルコ、韓国、そして日本。それぞれ得手不得手があり、もちろんバックグラウンドも違い、歳も下は19から上は4,50代まで幅広い。その多様さがとても面白い。先生はスコティッシュだけれど全くそれを感じさせない。自分より若いけれどとても巧みにクラスの空気を操る様には感服。theやsheなどいくつかの発音を何度も訂正される。とてもハードだったけれど、おかげで滞在中に参加した建物のガイドツアーの解説は以前より随分理解できたのはこの授業のおかげです。
という訳で、全く旅行らしくない、毎朝7時に起きて夜は12時に寝るという規則正しい平日を過ごす。まぁそれを望んでいたのだけれど。大体どこのお店も建築物も17時くらいに閉まるのと、復習や宿題に気分が追われて、グラスゴーに5日も居たのにほとんど観光もせず。かろうじてマッキントッシュの建物などを週後半に駆け足で廻った。
※GlasgowのTourist Informationに行けば、The Mackintosh Guide to Glasgowという案内パンフレットを貰えます。これがすごく便利。現存する全て(だと思う)の建物の住所から行き方、開館時間などをまとめてくれています。グラフィックもきれいなのでお勧めです。全ての入館料と電車、バスが乗り放題になるMackintosh Trail Tichketも買えます。詳しくは以下。
www.glasgowmackintosh.com
The Glasgow School of Art
Charles Rennie Mackintosh
1909
11 Dalhousie St, Glasgow G3 6RQ■駅から歩いて15分くらい。街中にあります。
■毎日10-17時まで定時的にガイドツアーが出ています。どういう間隔なのか分かりませんが、かなり頻繁にスタートしていました。4-9月は開館時間も延長されます。visitor用入り口は東側のDalhousieSTにあり、入ってすぐショップ兼レセプションです。奥に展示室があります。
ガイドツアーは大人£8.75、学生など割引£7.00(けれど学生証さえチェックされない。。)。ツアー中の撮影は禁止なので内部写真は残念ながらありません。
www.gsa.ac.uk/tours
マッキントッシュと言えばユーゲントシュティールやアールヌーヴォと同じ時代の古典に依拠しない有機的曲線を用いた、しかし今日の印象としては装飾的に感じる建築家としか捉えていなかったけれど、実物を見てみるとそのイメージはいい意味で裏切られた。細部の装飾的な処理はあまり目に付かず、それぞれの空間の光の入れ方、各エレメントのいちいち違う処理の仕方、部屋と部屋の繋げ方が面白い。デザインの密度がとても濃く、それが同じ濃度で家具まで貫徹されている。
The Hill House
C.R.Mackintosh
1904
Upper Colquhoun Street, Helensburgh G84 9AJ■Queen’s St stationから電車でHelensburgh Central駅下車。1時間に3本程度あり。所要40分程度。(最寄りは別の駅ですがそちらは乗り換え必要で、直行便は日に数本)。バスだと1.5時間かかります。駅からは歩いて2,30分。google mapにHill houseとあるのでわかります。(上記住所の場所はなぜかちょっとずれています。)
■4/1-10/31まで毎日開館。1330-1730(最終入場は1700)。tea roomは1330-1630。
大人£8.50、学生など£5.50。内部撮影禁止。レセプションで日本語の要約ガイドも借りられます。
www.nts.org.uk
普通の住宅街にあり、家の前に着くまでサイン一つないので少し迷う。(ほとんどの人は車で来るようで、歩いて来た人は他に見かけなかった。)写真のファサードからして普通じゃない。面白い。外観は最後に出てきたそうで、単に内部の現れとのこと。
内部は、2階は半分ほどの部屋が改装?されているのかいやにきれいになっているが、それ以外は当時の様子をなるべく再現されていた。リビングはワンルームだけれど、天井高の操作によってピアノを演奏したり、窓際のソファ置きニッチを作ったりと、ここも空間的操作が良い。当時としては珍しかったであろう暖房吹き出し(そういえばschool of artもダクト空調が付いており、機械室を見せて貰った。今は使われてないらしいけれど)が窓際ソファの足下に付いていたり、水道管でつくったカゴみたいなシャワー(当時の既製品らしい)を入れていたり、設備にもちゃんと目が行き届いていた模様。
手摺りなど階段室まわりと、踊り場に設けられた休憩ベンチがとてもよかった。あれは図面段階では出てこない形だと思う。2階の、列車の座席みたいな窓際のニッチもよかったなぁ。(後述のミラーレスのScottish pirlamentに似た場所があるのは彼らも見ていたのかな?)。本によれば、依頼を受けてすぐクライアントの家に滞在し、生活様式を観察した上でプランを書いていったらしいけれど、それも頷けるいちいちsuitableなデザイン。写真がないのが惜しい。
装飾的な家具については、ガウディのカサ・バトリョやオルタのオルタ邸を見た後では今ひとつに見えてしまうけれど、ベッドルームの家具が面白い。施主が前の家から持ってきたワードローブに合わせてその部屋のベッドなどをデザインしている。その気持ちよくわかるなー、という感じの処理の仕方。
Queen’s Cross Church ( Mackintosh Church)
C.R.Mackintosh
1899
Queen’s Cross, 870 Garscube Road, Glasgow G20 7EL■Buchanan Street Bus Stationから119番のバスで15分ほど。歩くとおそらく1時間弱。(上述のインフォでもらったしおりの番号と違いますが、こちらが正解。)
■月-金、10-17。(最終入場1630)日曜は14-17時。土曜休み。
大人£4。水曜13-17時はフリー。玄関に呼び鈴があり、押すと開けてくれます。
www.mackintoshchurch.com
入るとまずライブラリー?の部屋に案内されてそこでDVDを見させられる。45分くらいあった。マッキントッシュの生涯をまとめたもので全ては理解できなかったけれど、当時のグラスゴーの様子などもわかり思ったより面白い。建物自体はけっこう手を入れられているようでオリジナルと変わっている所もあるが、school of artでゆっくり見られなかった木造の小屋組を今一度見られたのが収穫。
上述のガイドには全12カ所ものマッキントッシュ建築が載ってるけれど、見に行ったのはこれだけ。
ちなみに、日本を出る前にマッキントッシュについての本を二冊借りていったのですが、その内の一冊、
建築家マッキントッシュ
小川守之 著
相模書房
はとてもお薦め。帰りの飛行機まで読めなかったけれど、行く前に読んでおくべきだった!と後悔した。マッキントッシュがどういう問題を如何にデザイン的に解決していったか、をとても丁寧に書いている。これを読むだけでも「アールヌーヴォの時代の、アートアンドクラフト期の後の建築家」という時代的意匠的カテゴライズ、先入観を取り払ってくれる。
その他、駅(駅舎は国や地域の違いは見えてどこも面白い)や現代建築を合間合間に散策。駅はQueen’s St stationの方が好きです。
フォスターのアルマジロは閉館時間過ぎていたので中に入ってないけれど、うーん、間に合っても入ってなかったかも。予算もあったのかもしれないけれど、近くに行くと倉庫みたいに感じる密度。
電車からたまたま見えて、おおっ!と思い、調べたらZaha Hadidの新しい美術館だった。6月21日にオープン予定らしい。残念。
http://www.riversideappeal.org/
OMAの建設中の病院施設は場所まで調べたけれど、時間が足りずに行かず。
金曜のお昼に最後の授業を終えて、グラスゴー最後の買い物など済まし、午後遅くにエディンバラへ向かう。