142日目 100528 PHILADELPHIA



8時半起床。朝食を食べ少し作業をしてから10時出発。バスに乗り込み、買っておいた一日パスを見せるも、ろくに見ずに通される。これならパンチしていないパスを持っておけば毎日タダで乗れてしまう。

バスの運転手は昨日は墨の入ったパンクスのお姉さんだったが、今日も墨の入ったいかつい男性。対応はかなり素っ気ないが、顔見知りにはバスの外にまで陽気に声をかけている。感心なのが、脚の不自由な乗客への対応。戦傷なのかわからないが、結構車椅子の人(多くは電動)をよく見かけるのだが、バスに頻繁に乗ってくる。その乗降の都度、電動で乗降口が上下し、かつ乗り込んで所定の位置に着くと運転手が車椅子が動かないように固定ベルトをロックする。その間結構な時間がかかるが、いらいらすることもなくちゃんと扱っている。

バス停から歩いてEastMarket駅へ。電車は本数が少なく少し待つ。乗り込むと皆切符を前の席の上部のクリップに留めている。それを車掌が切っていくシステムらしい。ちゃんとワンデイパスも日付をもぎってくれた。電車は郊外へ。思ったより遠い。どんどん周りが森になる。

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Fisher house
Louis I Kahn
1967
197 Millroad Hatboro Philadelphia,United States

■EastMarket駅などからR2のWarminster行きに乗り、終点ひとつ手前のHatboro駅下車。片道50分ほど。一時間に一本程度。
→駅前の道を南に歩くとByberry Avenueに出るので、それを西(右)へ。
→S.York Roadに当たるのでそれを南(左)へ。
→Mill roadに当たるのでそれお東(左へ。
→まっすぐ行くと左手に見えてきます。
徒歩15分ほど。線路上を歩くと近道ですが、安全を見て道路で行きました。電車から線路脇を歩いている人も見かけたので、禁止はされていないようです。単線で一時間に一本しか通らないので時刻表さえ確認しえおけば安全なのかもしれません。
またバス22番ならより近くまで行けますが、乗り場が今一市内のどこにあるかわかりませんでした。

■下にも書きましたが、現在フィッシャー婦人の娘さんが住まれている(管理されている?)ようで、見学については寛大な方らしいです。
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駅を降り、地図を見ながら歩く。高級住宅街なのか、前庭のある大きめの家が多い。樹木の大きさから古くからの住宅街のようだ。気持ちの良い環境にその家はあった。道路から塀も何もなしに芝生があり、家が建っている。

車が停まっており、家の中には明かりが見えたので、敷地内には入らず道路から眺める。気を遣って写真は最小限に、配置をメモに取る。前庭がとてもいい感じに手を入れられている。

周りを少し歩いてみようとすると、隣の家のおじさんが声をかけてくる。何か怒られるのかなと近寄ると、この家を見に来たのなら、もっと近づいて好きなところから写真に撮っていいぞ、と言う。今は娘さんが管理されているらしいが、フィッシャー婦人は見学にとても寛大な方らしい。そう言われても隣人がそんなこと言えるのか?とこちらが躊躇していると、ほらこっちに来てみろ、とずんずん入っていく。ノックをしてくれたが今は留守らしい。窓から中も撮っていいぞ!とまで言う。さらに裏庭の方に行き、橋のあたりからのアングルがいいぞとお勧めビューポイントを教えてくれる。ここは知ってるか?(知ってるはずがない)と、庭の奥にある物置小屋へ案内してくれる。そこは鍵がかかっておらず中にも入れてくれる。これはあまりカーンぽくないので、近くの大工にさらっと作ってもらったのだろうか。

お言葉に甘えてゆっくり心ゆくまで写真を撮らせてもらう。なんと贅沢な時間。外壁は最近オイルを塗り直されたのか、写真で見ていたより色が濃い。それ以外は築50年も経っているとは思えないくらい、きれに保たれている。よほど丁寧に使われメンテナンスされているのだろうか。個人所有のままでこの状態はすばらしい。特に前庭がうっとりするくらいとてもきれい。

外壁や建具はほぼ全て突きつけ、目地をとらずに木が貼られている。どこも割れてもいないのは取り替えられているのか、不思議。施工精度がすばらしい。出入り口は全て網戸との二枚扉になっている。周知のごとく窓はfixガラスの見るための窓と、換気のための凹んだ所に付いている開き戸に分けられている。内部の方が暗いのであまり中は見えなかったが、辛うじて見えたリビングはすばらしい!の一言。見とれるくらい気持ちの良さそうなコーナー。置いてあるものもセンスがいい。

二つあるキューブの片方が全面道路と平行になっており、その脇の階段を下りると裏庭に出る。階段脇には納屋?のような小屋があり、これも小さなキューブ。建具の形が思わずにやっとしてしまうくらい強引。ノブがなかったら扉があるとは全くわからない。

裏側に回ると高低差のある敷地の低い側となり、地下部分となる基壇は石貼り。開口部の石の回し方が面白い。地下はランドリーと物置に使われていた。暖炉もある。庭(というかどこまでが庭かわからない)には川が流れ、木製の橋がかかっている。またこれが質実剛健な意匠。これも設計したのだろうか。

しかし、マイレア邸といい、フィッシャー邸といい、敷地の高低差と方角くらいしか外部条件の拠り所がない(逆に言えばどうとでもできる)中で、これだけ異なる形が出てくるのも面白い。無数にある解答の中で、これを選び取った彼らの着想と勇気に感心。本当によくできている。感服。

隣のFさん宅に寄って重々お礼を言う。ペンシルヴァニア大に通ってるのか?と、やはり学生に見られてしまう。アメリカでも田舎ほど親切な人が多い、という友人の弁は当たっているのかもしれない。道を歩いていても、特に年配のアメリカ人はちゃんと挨拶を返してくれる。

帰りの電車の時間をチェックしていなかったため、一時間近く待って電車に乗りEastMarketへ戻り、すぐ後に来た電車に乗り換える。

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Esherick house
Louis I Kahn
1961
Sunrise lane 204,19118-3934 Chestnut Hill Philadelphia,United States

■EastMarket駅などからR8のWestHIllnut行きに乗り終点下車。片道40分程度。30分に一本程度。
→東側のEvergreen Avenueを南へ(右)
→ShawneeStを東(左)へ。
→Graves Laneを南(右)へ。
→1本目の名前のない道を左へ少し行ってから、Sunrise Rdを北(左)へ。
→突き当たり手前右手に見えてきます。
Graves Laneからはアクセスできないようで遠回りですが、この道しかないようです。徒歩15分程度。

■個人邸ですので道路からのみ。
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駅に着くと、既に夕方5時過ぎ。足早に向かう。ここも古くからの住宅地か、とにかく樹木が大きく、庭が皆とてもきれいに整えられている。あまり雨も降らない気がするのだが、なぜこんなに緑が青々しく保てるのだろうか。

迷うことなく到着。今は住まれていないのだろうか、あまり人気が感じられない。明かりは点いていないが、車は停まっており換気窓も開いており、庭もきれいに手入れされているので住んでいるのだろうか(って見方がストーカーのようで少し怪しい)。ここも一応敷地には入らず道路から見える範囲で見る。反対側が見たいが敷地に入らずに回り込める道は見つからず。見ている間にも、明らかに建築学生の三人組がこの家を見にやってきて、タイポロジーがどうのと言いながら帰って行った。

今度はちゃんと帰りの電車に合わせ戻る。30thSt Stationで降りて、明日のバス乗り場を一応確かめておく。歩いて19thStあたりまで戻り、すぐに38番のバスに乗りフィラデルフィア美術館へ向かうか、夕食を食べていくか、手頃な店を探していると、目の前をバスが通り過ぎてしまう。40分に一本なのに。後悔しながら次のバスを待つ。

フィラデルフィア美術館はデュシャンの収蔵点数が世界一だそうだが、ちょうど今マルセル・ワンダースの企画展をやっていたので、それが見たくて夜間開館のある金曜に合わせてやってきた。が、チケットを買いワンダース展の場所を訊くと、それは別館。今から行っているとすぐ閉まってしまうので泣く泣くあきらめる。webまでは見ていたのに、別館とまではわかっていなかった。一つ前のバスに乗れていたら行けたかもしれない。残念。

毎週金曜の夜は無料でコンサートが行われているようで、今夜もエレクトリックジャズのバンドが大きな音で演奏していた。聞きたい気持ちを横に置いてまずは近代美術の常設を見に行く。確かにデュシャンの点数はかなり多い。初期のペインティングというのは初めて見た。印象派/キュビズムっぽい普通の絵も描いていたのか。レディメイドから、大物、大ガラスまで二部屋丸ごとデュシャンで埋め尽くされている。好きな人には必見だと思う。

ダリの絵画はその解像度の高さが異様で、シュールレアリスムはあまり好きではないのに目を引かれてしまう。圧倒的に絵が上手い。その他、サイ・トンブリーだけの部屋や、ブランクーシだけの部屋もあり、コレクションがとても豪華。特にブランクーシは他で見た物よりいいものが揃っていた。柵がしてあり反対側に廻れないのがとても残念。彫刻は周囲を回れるように展示して欲しい。出ないと価値が半減だと思う。

急ぎ足で見終わって、お手洗いに行こうとすると見覚えのある大きな緞帳が。シャガールのアレコだった。青森で見たものの連作の一枚だろうか。ものすごい大きさと密度。

バスに乗り、降りた近くのまだ開いていたレストランで食事してから宿に戻る。真っ暗なのでちょっと怖い。途中誰も居ない道に車を停めて、扉を開けてガンガンにヒップホップを鳴らしているのには、道の反対側に渡って早足で通り過ぎる。22時前帰宿。シャワーを浴び、作業を少ししてから、明日は早いので23時半就寝。



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