135日目 100521 NEWYORK


8時前起床。朝食を食べ少し作業をしてから11時頃出発。地下鉄に乗り昨日休みだったグッゲンハイムに向かう。

今日はちゃんと開いている。大盛況。1階のみ内部撮影可能。天窓が閉ざされているのが残念。フラッシュがばんばんたかれている。これだけ大多数の人が楽しいと感じられる建物も珍しい。みな寝転んだり座ったりして独自のアングルを探して求めている。

まずは最上階までエレベーターで上がり、スロープを降りながら観覧。吹き抜けの手すり際まで行って下を見下ろしてみるとかなり怖い。高所恐怖症の人は無理だと思う。手すり壁が微妙に外側に傾斜していることと、手すり壁自体が薄い(120程度)こと、また上階にいくほど少しずつせり出しているため、顔を吹き抜けに出すと途中の階が見えずに一気に1階まで見下ろせてしまう。断崖絶壁のよう。

スロープを下りながら観覧していくのだが、思ったより足に来る。微妙であれ絶えず傾斜があるということが、脚に及ぼす負荷は想像以上に大きいようだ。Hiroshi Sugimotoの作品が7点ほどあった。

一時間ほどで出て、セントラルパーク脇のベンチで休憩。木陰があまりに気持ちが良いので、居眠りしてしまう。こんなに天気が良い日は、あくせく建築を見て回るよりここで昼寝でもしている方が正解なのではないか、と思ってしまう。

重い腰を上げて、地下鉄駅まで歩き、MOMAへ。
16時からの無料日なので並んでいるかな、と思ったら15時過ぎの到着時点で既に53thStの入り口から反対側の54thStまで並んでいる。前回前を通った時に、MOMA向かいのベンチに雀が羽を休めるように多くの人が食べていた屋台のチキンライスを買ってみる。黄色いライスにチキン(肉は選べる模様)とキャベツがかかり、ホワイトソースとチリソースをかけたもの。6ドル。

最後尾まで歩いて列に加わり、食べながら待つ。量が多く、少なめにしてもらったチリソースがそれでも激辛。久々にやられた。汗を流しながら食べる。四時より10分くらい前に列が一気に進み出す。もう開いたらしい。進み出すとかなり早く、結局4時10分くらいに0$と書かれたチケットをもらい入場。人は多いが、MOMA自体が広いので混雑して見れない、というほどのものではない。

3階の建築とデザインの展示から見る。建築はNYのウォーターフロントの再開発案を展示している。熱心に読み込んでいる人が多いのが印象的。プレゼンテーションも確かにきれいだが、自分たちの街の開発案をこれだけ熱心に、おそらく建築専門でない人が見る、というのもすばらしいし、それを伝えるメディアとしてのMOMAもすばらしい。

同じ階にプロダクトデザインの展示がある。これが宝の山(まぁ全ての階がそうですが)。インゴマウラーや吉岡徳仁の実物を初めて見る作品が並ぶ。オルタのcasa berangeのための図面というかスケッチがすごい。

あのような曲線は頭の中で出来ていたのだ。超写実的な絵のような図面。これなら作れそう。ガウディやマッキントッシュの家具やスケッチもあり、収蔵品の範囲と量は想像もつかない。よくこれだけ集めたものだと感心。セレクトがすばらしい。

最もうれしかったのはLucie Rieの器の実物を初めて見れたこと。おそろしく薄い。そして煌めく色がなんとも言えない。写真ではこれはわからない。

次に4,5階の絵画と彫刻を見る。こちらもすごい。さすが。宝の山。マティスからセザンヌから、それらの作家の作品の中でも、これがあるか!というすばらしいセレクト。入り口で免許証などパスポート以外の写真入りIDのデポジットと引き替えにオーディオガイドを無料で借りられる(日本語もある)のだが、その解説がとてもわかりやすく示唆に富む。

これまで聞いた解説とは違う。意図と効果を背景を含めて簡潔に説明している。引っかからない作品でも解説を聞いてみるとなるほど、と思えるものが多く、楽しめる。一部英語しか解説がない作品もあるが、常設作品についてはほぼ全て日本語もあったので、是非お勧めです。

谷口吉生さんの意匠は全く間違いがない。ダウンライトや空調の納め方から、壁面や幅木の見切り方、ガラスの納まりまで。丁寧。



ガラス手すりの足下を見せないために幅90ほどで一段下げているところなど、簡単なことだが大きな違い。遠くから見るとガラスの刺さる足下が見えないため床が際まで続いているように見える。昔どこかの美術館で谷口さんの展示があり、MOMAの設計図書の青焼きの恐ろしい量が展示してあり、それを見て愕然とした覚えがある。シンプルに見える納まりほど詳細で大量の図面を必要とする。

吹き抜けの取り方、断面の計画が絶妙。各階の色々な所から吹き抜けを覗けるようになっている。形も大きさも位置も違うそれらによって、自分のいる場所が吹き抜けとの相関関係でわかる。それが吹き抜けから見上げても面白い。

その吹き抜けのホールでは、現在三ヶ月の特別展中のMarina Abramovicの展示に絡めて、彼女自身が三ヶ月間毎日、一対の向かい合わせの椅子の片方に白いドレスを着てじっと座る、というパフォーマンスを行っていた。向かい側には観客が座ることができるが、座った人も動くことを許されない。二人は微動だにせず向き合うことになる。彼/彼女との間にできる視線の関係、またそれを周囲で見守る大勢のギャラリーとの関係はとても面白い。うまいこと考えるなぁと思う。

最上階でも彼女の大規模な回顧展の展示があり、同時に過去のパフォーマンス作品のいくつかを別の人々が、まさにその会場で行っている。全裸の女性二人が細い通路に向かい合い、観客がその二人の狭い隙間を通る、という作品もあった。その時の緊張は他にない種類の緊張だと思う。

また別の部屋では椅子に背中合わせに座った女性二人が髪を結い合わせられていたり、また逆に向かい合う男性二人が指先が触れるか触れないかの距離で指を差し合っていたり。目の前で生じる緊張感、がこれらの展示の醍醐味なのかな、と感じる。

 

もう一方の企画展はアンリ・カルティエ・ブレッソン。すごい人だかりなので、足早にさっと見るのみ。

最後に2階をちらっと覗いてから、もう閉館間近なので中庭の椅子に腰掛けて休憩。なんと贅沢な空間。黒い遮光ガラスの向こうではフォーマルな格好の人々がディナーを取っている。あちら側とこちら側にはガラス以上の開きがあるように感じる。

結局4時間滞在したことになるが、全然足りない。本当に一日がかりで見る必要がある、それくらい楽しめる美術館だった。
そのまま歩いて宿へ帰る。作業をしていると昨夜会った若者が、12時前に昨日に引き続き、今日もクラブに行ってくると言う。元気だ。深夜の地下鉄も昔ほど危なくないらしい。早い明日に備え24時半就寝。



No Responses to this post

This post has no comments yet.

Leave a Reply